Treasure Reports
第一編 東北新幹線(東京−盛岡)
第十三章 蔵王トンネル
駅間:福島−白石蔵王 位置:東京起点271k470m−282k685m 全長:11,215m
第一節 もうひとつの難所
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東北新幹線 蔵王トンネルは、福島県と宮城県の境に位置する全長約11kmの山岳トンネルである。
第一章福島トンネルの節で述べたように、福島市は四方を山で囲われた典型的な盆地地形である。とりわけ福島・宮城県境の越河(こすごう)峠は古からの要害であり、交通網は須く苦労を要することとなった。
東北本線は、藤田を出るとすぐ25‰、半径400mの急勾配・急曲線の連続となる。貝田駅の少し北側、国道4号や東北道とクロスするあたりにサミットがあり、それを過ぎれば今度は一転して25‰の下り勾配となる。越河の周辺で一旦は落ち着くが、その先白石市街が見えるまではまた延々と下り込む形である。
ヨン・サン・トオ(1968(昭和43)年10月白紙ダイヤ改正)までに全線複線電化の完了をみたが、地形上の制約のためか緩勾配の別線線増とはならなかった。それに加えて奥羽山脈からの猛烈な吹き下ろしを受け、たびたび徐行や抑止の憂き目にあうことも珍しくない。福島−仙台間でのダイヤの乱れは、9割方この場所が原因といっても過言ではないほどである。
一時は天候に左右されにくく、勾配のない阿武隈川沿いのルートをバイパス線として貨物と一部の特急を走らせる計画があったが、結局そのバイパス線(現在の阿武隈急行)は国鉄の手で全通することはなかった。どうも昔から、白石へ立ち寄ることに意義があったようだ。筆者は、何故交通網がみんな白石に向かおうとするのかについて残念ながら浅学である。
ところで、同じような難所である岩手県の十三本木峠(御堂−奥中山−小繋)でさえトンネルがあるにもかかわらず、この場所は東北線も東北道も頑なにトンネルと
していない。何かの曰くを感じずにはいられないこの地に、蔵王トンネルは設けられた。曲線は一切無く、2〜6‰という極めて良好な線形は、他の交通網とはまさに一線を画すものであることは地図から見ても明らかだ。
福島トンネルが設計変更するまでは線内最長と注目され、期待を一手に集めたこのトンネル。やはり何事もない訳がないのだった。待ち受けていたのは、東北新幹線最難関の工事だったのである。
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第二節 最初で最後 へ続く
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