Treasure Reports
第三編 東北新幹線(盛岡−八戸)
第六章 滝沢トンネル
駅間:盛岡−いわて沼宮内 位置:東京起点506k480m−508k926m 全長:2,446m
第一節 ノーマーク
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東北新幹線 滝沢トンネルは、岩手県岩手郡滝沢村地内を通り抜ける全長2.5km弱の都市型トンネルである。2002(平成14)年12月の八戸延伸開業区間では1番目のトンネルにあたる。
岩手富士の異名を持つ秀峰岩手山が従える広大な裾野の東縁にあたる丘陵地帯で、盛岡のベッドタウンにあたる上、文教施設が集中するこの地域は人口密度が非常に高い。このため滝沢村は全国で最も人口の多い村として有名であり、2005年時点で5万5千人を超えている。従って、後述する工事誌などには山岳トンネルではなく都市型トンネルと書かれている。
私は2001年〜2005年の4年間、岩手県内の大学に籍を置いた関係でこの滝沢村に住んでいた。それも滝沢駅にほど近い場所であった。しかし私は、このトンネルの存在を開業直前まで知ることはなかったし、知った後も全く無関心であった。
理由は3つある。
1つは、この場所の特異性であった。東北本線は1968(昭和43)年の白紙ダイヤ改正(ヨン・サン・トオ)に向けて各地で複線電化工事が進められていたが、16.7‰の連続急勾配が介在した厨川−渋民間はルートが大幅に変更され、滝沢駅は東へ移動した。つまり旧線跡の存在する場所なのである。この趣味に走る者にはうってつけのネタであり、案の定私はこの旧線探しばかりに熱中してしまうこととなる。
2つ目は、これも一つの悲しい性で「懐古主義」に走ったことである。新幹線の開業で経営分離され、特急も無くなってしまう在来線の方に意識が集中し、むしろ新幹線は疎ましい存在であった。どうせこれから飽きるほど乗るのだから別に見なくても、ということである。
3つ目は、圧倒的な情報の不足である。私が引っ越した当時は、ようやくADSLの1.5Mが引けるかどうかという時期であり、ネット上のコンテンツも随分貧弱であった。空中写真は存在せず、うぉっちずの前身の地図閲覧システムがようやく試験運用を始めた頃という状況であった。従って新幹線がどういうルートを通るのかなどは知ることも推定することもできなかったのである。
加えて、鉄道雑誌等から得た情報によって、長野新幹線以降のトンネル工事は高度にシステム化が進んだという意識を持ったことで、最長の岩手一戸トンネル以外には特に注目も必要ないだろうという線引きをしてしまっていた。
かくして、4年間も超至近距離にいながらその正体を一切知ることなく、私は岩手を去った。
翌年、福島トンネルで数々の衝撃を受けた私は、国会図書館で「東北新幹線工事誌 盛岡・八戸間」を手にしたが、この時は岩手一戸トンネルしか頭になく、結局滝沢トンネルの部分を初めて読んだのは2006年の春のことである。そこで私は一瞬のうちに激しい後悔に襲われることになる。
このトンネルに斜坑がある、と書いてあったからである。
居ても立ってもいられなくなり現地に赴いて見た光景は、さらに私を打ちのめす「現実」であった。
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第二節 華麗なるエスケープ へ続く
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