Treasure Reports
第一編 東北新幹線(東京−盛岡)
第一章 福島トンネル
駅間:郡山−福島 位置:東京起点237k871m−249k576m 全長:11,705m
第一節 誰も知らない最長記録
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東北新幹線 福島トンネルは、東北本線安達駅付近から南福島駅付近までを結ぶ全長11.7kmの山岳トンネルである。
福島盆地は周辺と比べて100m以上の標高差があり、在来線も北に越河、南に金谷川の難所を召し抱えていた。これを解消するため、特に大きな山がそびえるわけでもない所に長大トンネルが出現することとなった。
福島市の地形は、古くは湖であったといわれている。
実際に土地の水はけは悪く、阿武隈川や荒川、摺上川などが氾濫する度に、しばしば水浸しになっていた。
そんな湖底地形なので、人も車も鉄道も、四方八方の坂の克服は容易ではなかった。
左の地図には等高線がないので、その意外な険しさをうかがい知るのは難しいと思われるが、注目は東北本線の線形である。
下り列車は松川を出るとすぐに25‰の下り坂となり、金谷川からはまた25‰の下り坂である。
単線時代、上り列車はこの勾配に苦しめられたため、複線化の際に上り線を要所で迂回させ、勾配を10‰(最急20‰)に緩和する措置がとられた。その結果このような珍しい線形になったのである。
(越河峠が別線線増にならなかったのは、地形的に制約があったのと、丸森線(現在の阿武隈急行)をバイパスルートにする予定があったためといわれている)
さて、在来線が地上を右往左往する中、優雅な曲線を描きつつ緩やかに高度を下げ、福島盆地南端に達する新幹線のトンネル。
この福島トンネル、実は開業から20年もの間線内最長であったにもかかわらず、ほとんど周知されていなかった。
どうしてそんなに影が薄かったのだろうか?
確かに、同時期に開通した上越新幹線の長大トンネル群に比べれば、12km弱程度の福島トンネルは格落ちである。とはいえ、東北新幹線の中では筆頭格ともなればもっと注目を集めても不思議ではない。
実は、注目されなかった理由が存在する。
このトンネルは、開業後しばらく経ってから11.7kmと公表されたのだ。
ではそれまでは何キロだったのかというと、わずか8km。8kmでは、当時の国内の鉄道トンネルを長い順に数えていくと10位内にすら入らない、「別段大したことのない記録」だったのである。
ちなみに世間では、実際は二番手でありながら暫定一位の蔵王トンネル(11,215m)が難工事のこともあって注目されており、次点には一関トンネル(9,730m)も控えていた。
そんな状況で8km程度のトンネルには到底お鉢が回ってこないのだった。
どうして8kmのトンネルが、突如4km近くも伸びたのだろうか。
誤差の範囲というにはあまりに大きすぎるし、上越で多く見られるような「隣のトンネルとシェルターなどで一体化」したわけでもない。何か重大な変更があったのではないか・・・?
二十年来、このトンネルのほぼ真上に住んでいながら解明できなかった謎。
就職で福島へ戻ってきたのを機に、筆者はその全容解明へと乗り出した。
勝手知ったる…と思い込んでいた我が庭は、実は知らないことだらけであった。
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第二節 セスナは見た へ続く
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