Treasure Reports
第一編 東北新幹線(東京−盛岡)

第九章 新城舘トンネル
駅間:新白河−郡山 位置:東京起点200k094m−200k616m 全長:522m


山が先かトンネルが先か
全一回

東北新幹線 新城舘(しんじょうだて)トンネルは、島県須賀川市地内を通る、全長522mのトンネルである。

このトンネルを抜けると、広大な郡山盆地へと入っていく。そのため次のトンネル(白沢トンネル)は約23kmも先である。

このトンネルの所在地は須賀川市稲字新城舘(すかがわし・いな・あざしんじょうだて)というユーモラスなもので、その地名から何かの城趾でもあるのかと思ったが、調べた限りでは不明である。

さて、このトンネルも工事誌上ではスルーされている。
上越新幹線工事誌以降の冊子が全てのトンネルを網羅しているのに対して端折り過ぎである。さらに言えば、同じ東北新幹線工事誌でも工事局ごとに記述内容に差があり、黒川−有壁間のものが最もいい加減であった。
個人的な主観だが、工事誌とは記録であって教科書ではないのだから、ダイジェストであっては困ると思うのである。

ちなみにすぐ南のトンネルは小屋トンネル(585m)だ。










その他の分量

さて、このトンネルの注目点も先の2トンネルと同じである。

工事誌p.376-377の「トンネル一覧表」によれば、施工期間は1976(昭和51)年12月21日1977(昭和53)年3月20日

今度こそ航空写真の撮影時期から完全に外れる。

例に漏れず「掘さく工法別延長」欄を見ると、「その他」欄に「362」とある。
これまでの経験から開削工法の延長であることは想像できたが、全長522mに対して362mというのは3/4にもなる。
十文字トンネル1/3をも上回る「ほとんど開削」というトンネルの外観や、如何に。

ブッシュ・ド・ノエル?
国道118号から分岐する市道を少し登ったところに新幹線との交差地点がある。
道路のすぐ脇から鉄柵に囲われておりある意味予想通りの光景である。
柵の中は荒れ放題でご覧の有様。ごみなども散乱し、あまり気持ちのいいものではない。この日は取材行程の一番最後で日も落ち、あまつさえ曇り空だったので陰気な感じであった。

保護柵に並行して砂利道が通じており、坑口を見るために下ってみることにした。







結構な距離を歩いてようやく出口へ。
坂の途中に何年前のか分からないダイヤルチャンネル式のテレビが捨ててあって驚いた。



















トンネルの防護柵が完全に終わるところまで下りてみた。
線路は高架になっていて、道路との間に深い溝がある。このため見通しは悪くないが、撮影などをするには微妙な高さである。

















振り返るとそこには盛岡方坑口。
特筆すべきもののない普通の形状で、扁額はない。
こちら側には非常口となる門扉は存在しないようだ。

















来た道を戻って、今度は道路を挟んだ反対側を写す。

ん、何であんな所に門扉が。



















門扉の前も後ろも全くの荒れ地で、一体何の意味があるのかという気がしていたが、よく見ると、これ、
トンネルに土被せただけ?

本当にちょっとでも掘り返せばコンクリートアーチが出土しそうなくらいのやっつけ仕事感が漂っている。
どうせ土地利用もないと考えたのか、正面に門扉がある以外一切の防護を放棄している。

そういえばこんな形のケーキあったっけな。

見渡した範囲は全部開削じゃないだろうか、というような状態であった。これほど分量が多いなら切取にしても良さそうだが、わざわざトンネルにするのには理由がありそうだ。
開削トンネル博覧会はまだまだ続きます。


−終−


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