Treasure Reports
第一編 東北新幹線(東京−盛岡)

第八章 十文字トンネル
駅間:新白河−郡山 位置:東京起点194k868m−195k468m 全長:600m


読んで字のごとし
全一回

東北新幹線 十文字トンネルは、福島県岩瀬郡天栄村と須賀川市にまたがる、全長600mのトンネルである。
このトンネルも白坂トンネル同様、工事誌にさしたる記述がなく、また全長が短いことから特に期待されるようなネタはないだろうと踏んでいた。
しかしその名前からトンネルの場所が気になりだし、地図上で探ってみたところ左のような場所に位置していることが分かった。
まさか、トンネルの上に交差点があるから「十文字トンネル」なのか…?

あまりにストレートで安直すぎる名前に興味をそそられた筆者は、一度調べてみることにした。





















ラーメン?

白坂トンネル同様、このトンネルのスペックは工事誌の「トンネル一覧表」が唯一のソースである。
これによると、施工期間は1976(昭和51)年3月15日1977(昭和52)年11月14日である。

…あ。航空写真が資料に使えない。困ったなぁ…

注目すべき項目が2つあった。
一つは「巻厚別延長」で、要はトンネルを構成するコンクリートアーチの厚みがある規格ごとに何m分あるかを示したものである。
その、「その他」欄に「(ラーメン)200」とあった。
ラーメンラーメンって高架橋のアレ?ということは箱形断面なのか?なぜ?
もう一つは「掘さく工法別延長」で、これも「その他」欄に「240」の数字。しかし「開さく」「NATM」などの注釈を伴っておらず、よく分からない。
箱形断面なのであればまず間違いなくその区間は開削だと思っていいのだが、そうすると全長600mに対して実に1/3もが開削だということになる。これは面白いかも知れない。ただ、白坂トンネルのように全く分からない状況でないとも限らない。
何はともあれ、行ってみるしかない。

一枚だけあった
十文字トンネルの上空は、ほとんどが1975(昭和50)年度の撮影のため工事開始前になる。しかしたった1枚だけ、1976(昭和51)年度の写真が現場をカスっているのを発見した。
これを見る限り、交差点付近の地表面が怪しい。
















なで斬りにされた十文字
十文字トンネル東京方坑口
を…と思ったのだが、地形のせ
いで奥まった場所にあり近づけ
なかった。
反対側もこんな調子である。



















何かしらの違和感を覚えて撮影した、上の写真の東京方。

高架の高さが異常に低い。
恐らくこの程度の高さなら、東海道新幹線では築堤にしていたはずである。山陽・東北・上越の時代になるとスラブ軌道化されたこともあり、強度面や排水で有利な高架路盤が重宝されるようになる。その後長野新幹線からは、経済性などの面からまた土路盤の割合が増えていく。

時代によって「新幹線のある風景」の様相は異なる。






さて、これが「十文字」の由来たる交差点である。実際は多少角度を付けて交差しているため、十文字というよりはX文字である。

別にこれだけならごく普通の交差点なのだが…















少し南側に戻ると、道ばたにひょっこり現れる用地境界標
その西側に延々続く柵。
これは。



















このように、微妙な高さの盛土を柵がぐるっと囲っている。
これまでに見たような開削区間の後処理によく似ている。

道の西側がこの状態だから、当然東側もあるわけで…。















交差点に向かって延びる2本の道路を斜めにズバッと斬っていく、細長い用地。
十文字トンネル保護盛土であることはもはや明らかだ。

奥が盛岡方である。
















交差点を過ぎて、上の写真の反対側から東京方を望む。

それにしても、見つけてくださいと言わんばかりの分かりやすい構造物であった。
ただここを車で通る人でこれが何なのかを知っている人はいかばかりか。













2本目の道路の先にもまだ少し柵で囲われた領域があった。

短いが非常にユニークなトンネルであった。




















−終−


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